津村記久子「ディス・イズ・ザ・デイ」
これは今年のサッカー本大賞くるな…という一冊。架空のプロサッカー2部リーグを舞台にしたクラブサポーターを巡るオムニバス小説です。全22クラブの最終節11試合がそれぞれ1章ずつの全11章の構成。よくこんなこと考えついたなとひとしきり関心しつつ、まあ面白いのでサッカー好きな人は無条件に読むべき。できれば最終節前に読んで、最終節を眺めるのがいい。
学生、主婦、高校生、OLまでまあいろんな人がサポーターとして出てきます。立場もコアサポからライトサポまで様々。普段の生活があって、家族があって、悩みがあって、という中で、なぜ週末にサッカーを観るのか、スタジアムにいくのか、それでどうなるのか、ということがそれぞれの視点で語られます。なんでだかわからないけど目頭が熱くシーンも多い。
架空のクラブなのにけっこう納得できる。岩手出身の自分にとっては遠野のクラブがでてきたあたりのわかってる感がグっときましたね。別の世界線ではそれもあったかも、っていうチョイスです。あと近畿圏のクラブの物理的な距離感とか。
最終節というのはおそらくどのシーズンでもどのクラブでもそれなりにドラマがあって、それをこの視点でまとめて、ほんとおもしろい。で、このドラマはたぶん2部リーグ、現実でいうところのJ2でだけなんですよね。昇格と降格があるから。優勝とかよりもそっちのほうが大事な世界で、そういうのがあるからJ2面白いんだよなと再認識した次第です。
エピローグが昇格プレイオフの話というのもよくできてる。それで、最後の話があの人の話というのもね、Jリーグの歴史をしみじみ思い出される内容でした。
J2リーグの最終節を残すタイミングの今が旬の一冊です。
- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/06/07
- メディア: 単行本
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